水車のある教会(The church with an over-shot wheel 和訳)
オー・ヘンリー(O Henry)作・横田祐訳
レイクランドは流行の避暑地のカタログに載っていない。 それはクリンチ川の支流が流れる、カンバーランド山脈の高原にある。 レイクランドは２ダースの家々からなる幸せな村である。 その村には寂れた狭軌鉄道がある。 あなたは「鉄道が途切れた先に松があり、恐怖と孤独からレイクランドへ通ずるのだろうか？または聞き手を家に帰らせるために、レイクランドが無くなり、ひっそりと鉄道のそばで独り言ちるのだろうか？」と思う。
あなたはもう一度「なぜ、そこがレイクランドと呼ばれるのか？」と思うだろう。 池(lake)など無いし、土地(land)という名にし負わないほど痩せている。
村から半マイル行けば、古く大きな家「鷲の家」が立っている。 ジョサイア・ランキンが宿泊施設である鷲の家を安い料金で運営している。 その訪問者は山の空気を求める。 鷲の家は微笑ましいほど管理がずさんである。 というのも、近代の合理化を求めず、完全に古風であり、完全に心地よいほど無視され、 喜ばしいほど散らかっていて、あなたの家のようである。 しかし、きれいな部屋があてがわれ、良い十分な食事が与えられる。 その考えは「残りはあなた自身と松が補う。」である。 自然は鉱泉とぶどう蔓のブランコとゲートボールを提供する。 ゲートは木製だけれども。 あなたは週に二度、簡素な仮設の舞踏会でバイオリンとギターが奏でる音楽という芸術作品を手にする。
鷲の家のお得意さんは必要な楽しみと喜びを求める。 彼らは忙しい人々であり、歯車が一年中回るよう二週間毎に巻くべき時計に似ている。 あなたは低地の町の学生を見つけるだろう。 しばしば、芸術家や丘の太古の地層を理解しようと躍起になった地質学者も。 少数の静かな家族がそこで夏を過ごす。 そして、頻繁に疲れた我慢強い修道女一人か二人。 彼らはレイクランド中でお堅い女と知られている。
鷲の家がカタログを発行すれば、鷲の家から４分の１マイル離れた所に 「興味深い物体」と客に説明するであろう物がある。 これは使われなくなった古い古い粉挽き所である。 ジョサイア・ランキンの言葉によれば、それはアメリカで上射式の水車を持つ唯一の教会であり、 世界でベンチとパイプオルガンを持つ唯一の粉挽き所である。 毎週日曜日に鷲の家の客が古い粉挽き教会に出席し、汚れなきキリスト教徒のような牧師が話す 経験と苦痛の石臼で挽かれた有益な話、又、散らばった小麦粉の地面＊を聞いた。 ＊訳注：トートロジー（同語反復）である。
毎年、初秋になると鷲の家に来るエイブラム・ストロング。 彼は暫く名誉ある愛される客になった。 レイクランドで彼はエイブラム神父と呼ばれた。 何故なら彼の髪が真っ白で、彼の顔は赤く、彼の笑いは幸せそうで、彼は黒い服と広い帽子を身に付け、 そんな外観が神父のようであったから。 彼と知り合って３、４日経った新しい客でさえ、彼にこの親しい称号を与えた。
エイブラム神父は長い道のりを通って、レイクランドへ来た。 彼は北西にある大きく喧騒な町で住んでいた。 そこで彼は複数の粉挽き所、と言ってもベンチとオルガンの無い大きな粉挽き所、を持っていた。 つまり、大きく醜い山のような粉挽き所で貨物列車が一日中蟻塚の周りの蟻のように動き回った。 そして今、絡み合う二筋の物語であるエイブラム神父と粉挽き所だった教会が語られる。
教会が粉挽き所だった日々に、ストロング氏は粉挽き屋だった。 国中で彼より楽しく粉まみれで忙しく幸せな粉挽き屋は居なかった。 彼は粉挽き所から道を挟んだ小さな田舎の家で住んでいた。 彼の手は重く、しかし彼の挽き賃は安く、そして山を登って長い岩の道を通り穀物を彼に届ける人が居た。
粉挽き屋の大きな喜びは彼の小さな娘、アグレイアだった。 それはとても良い名前で、実際、ブロンドのヨチヨチ歩く子供で、しかし、 登山者達は心地よい響きの印象的な名前を愛した。 母は本の中でそれを見つけ、良くも悪くも名付けた。 アグレイアの赤ちゃん時代に、一般的に使われるので彼女は彼女の名前を嫌がって、 彼女自身を「ダムス」と呼ぶ事にこだわった。 粉挽き屋と彼の妻は頻繁にアグレイアから不思議な名前の出所を聞き出そうと試みたが、失敗した。 ついに彼らは理論に達した。 田舎の家の裏の小さな庭でしゃくなげ(ロードデンドラン)の花壇があり、子供が奇妙な喜びと興味を持って付けた。 それが彼女の好きな花の印象的な名前をめぐる家族の交わり、「ダムス」を考えた彼女の経緯だった。
アグレイアが四歳の時、彼女の父は粉挽き所で毎夕小さな行進を行った。 それは天気の許す限り行われた。 夕食が準備されたら彼女の母は彼女の髪をブラシで梳き、きれいなエプロンを着せ、 父を呼ぶ為に彼女を粉挽き所へ行かせた。 粉挽き屋が粉挽き所の扉から入ってくる彼女を見れば外に出て、小麦粉の塵で真っ白になり、 彼の手を振り古い粉挽き屋の歌を歌った。 彼はその部分に詳しく、それは次のようであった。
「水車が回る。
麦粉が落ちる。
粉に塗れた粉挽き屋は幸せだ。
彼は一日中歌う。
彼の仕事は遊びだ。
愛しいあの子を思えば。」
そしてアグレイアは笑いながら彼の元に駆け寄り、こう呼んだ。
「父ちゃん。ダムスをお家に連れてって。」そして、粉挽き屋は彼女を肩に乗せ、 粉挽き屋の歌を歌いながら夕食に行進した。 毎夕これが行われるはずだった。
ある日、彼女の四歳の誕生日から一週間経った日、アグレイアが消えた。 最後に見た時、彼女は田舎屋の前の道端で野花を採っていた。 少し経って、彼女が余り遠くへ行かないよう注意する為に、彼女の母が外に出たら、彼女は既に居なかった。
もちろん、彼女を見つける為に、あらゆる努力が払われた。 近所が集まり森や山を数マイルに渡って探した。 粉挽き屋の為に、彼らは競う様に足を引きずり、黙々と長距離を歩いた。 彼らは彼女の足取りをつかめなかった。 一晩か二晩前、ジプシーの家族が付近の道で野宿した。 彼らが子供をさらったと推測された。 彼らの馬車に追い付き調べたが、彼女は見付からなかった。
粉挽き屋は2年粉挽き所に留まった。 そして彼女を見つける彼の望みは潰えた。 彼と彼の妻は北西へ引っ越した。 数年後、彼は大きな粉挽き屋の多いその地域で近代的な粉挽き所の所有者に成った。 ストロング夫人はアグレイアを失ったショックから立ち直れずに、二年後粉挽き屋だけ残した。 彼は一人苦しみを引きずる為に、残された。
エイブラム・ストロングが成功した時、彼はレイクランド、特に古い粉挽き所を訪れた。 その光景は彼を悲しませたが、彼は強い人で、いつも人を励まし親切にした。 その時、彼は古い粉挽き所を教会に変える事を思いついた。 レイクランドは教会を建てる為に貧乏過ぎた。 そして登山者達は補助できない程貧乏だった。 20マイル四方に礼拝所が無かった。
粉挽き屋は粉挽き所の外観を可能な限り変えた。 大きな上射式の水車は元の場所に残された。 教会を訪れた若い人々は彼らの頭文字を柔らかく古びた木に刻んだ。 堰が一部壊れ、透明な山水が波打ち、ばらばらに岩床に注いだ。 粉挽き所の中はもっと変わった。 水車の軸、臼、ベルトとプーリーはもちろん取り外された。 二列のベンチが通路を挟んであり、一端には少し高くなった教壇と説教机があった。 他の端3つに備え付けられたものは聴衆席、そして内側の階段だった。 古い粉挽き教会の信徒が誇るオルガン(本物のパイプ・オルガン)も聴衆席にあった。 フィービー嬢はオルガン奏者だった。 レイクランドの男子は日曜のミサで彼女の為にポンプを踏み、自慢した。 バンブリッジ牧師は洗礼者だった。そして欠かさず彼のリスの峠から古い馬に跨って来た。 そしてエイブラム・ストロングは全てに払った。 彼は洗礼者に年額を500ドル払い、フィービー嬢に200ドル払った。
このように、アグレイアの記憶で、彼女がかつて住んだ古い粉挽き所は共同体を祝福する建物に変えられた。 短い子供の人生が十年良いものを3倍以上もたらした。 しかし、エイブラム・ストロングは彼女の記憶の為に記念碑をもう一つ建てた。
北西にある彼の粉挽き所から、アグレイア小麦粉が売り出された。 それは、その年にできた最も硬く高品質の小麦から作られる。 国中の人々はアグレイア小麦に価格が二つあることをすぐに知った。 一方は市場で最も高価で、他方は只だった。
どこであっても、人々を大変困らせる大災害(火災、飢饉、竜巻、ストライキ、大飢饉)が起これば、 急いで無料でアグレイアの善意の荷物が届いた。 それは注意深く適切に届けられた。しかし、無料であった。 飢えた人々が1ペニー払うことを許さなかった。 「大きな火事が都市の貧乏な地域で起これば、先ず消防隊長の馬車がそこに着き、 続いてアグレイア小麦粉の馬車が着く。そして消防車。」と言われる様になった。
だから、これはアグレイアにエイブラム・ストロングの記念碑だった。 恐らく、詩人はこのテーマを小説じみて美しいと思うだろう。 しかし、幾分の華美は甘く素晴らしいものに見えるだろう。 つまり、純粋で白く若い花で、愛と善意という仕事を実行していて、記憶が知らせる失くした子の霊に好かれるであろう。
カンバーランドに厳しい年がやって来た。 穀物の収穫がどこも少なく、黒麦さえ取れなかった。 山の洪水が蓄えをだめにした。 林の狩りさえ少なく、獲物が無くご飯がお預けになった。 特にレイクランドは深刻だった。
エイブラム・ストロングがこれを聞いて、すぐに彼の号令が飛んだ。 そして、小さな狭軌鉄道の列車がアグレイア小麦粉をそこへ降ろし始めた。 粉挽き屋の命令は「小麦粉を古い粉挽き教会の聴衆席に蓄えろ。」だった。 そして、教会に出席した全ての人が一袋持って帰った。
2週間後、毎年の様にエイブラム・ストロングが鷲の家を訪れ、再びエイブラム神父になった。
その季節は鷲の家に客が少ない。 彼らは一人ローズ・チェスターだった。 チェスター嬢はアトランタからレイクランドへ来た。 彼女はアトランタの百貨店で働いていた。 今回が彼女の生涯で初めての休暇だった。 店主の妻がひと夏を鷲の家で過ごした。 彼女がローズにそこが良かったと語り、3週間の彼女の休暇にそこへ行くよう薦めた。 店主の妻はランキン夫人に手紙を宛て、ランキン夫人は喜んで彼女の力と気遣いでローズを迎えた。
チェスター嬢は健康面で問題を抱えていた。 彼女は20歳くらいで、顔が青く、長い室内生活から気弱だった。 しかし、レイクランドで1週間過ごすと、明るさと明朗な精神が戻った。 その時は9月の初めで、カンバーランドが最も美しい。 山の葉が秋の色に輝きを増す。 吐息がシャンパンで、夜は冷たく澄み切っていて、 鷲の家の暖かい毛布の下で暖をとる為に腕を組ませた。
エイブラム神父とチェスター嬢は親友になった。 年老いた粉挽き屋は彼女の身の上話をランキン夫人から学んだ。 そして、すぐに彼の興味は、この世界で自分の道を切り開いている細い孤独な女の子に向いた。
山の田舎はチェスター嬢にとって新鮮だった。 彼女は長年アトランタの暖かい平らな町で住んだ。 そして、素晴らしい変化に富むカンバーランドが彼女を喜ばせた。 彼女は滞在中ことごとく楽しんでいると見受けられた。 彼女の少ないヘソクリは彼女の消費と共に注意深く概算された。 なぜなら、彼女が働き始めれば1ペニーが彼女の小さな出費になるから。
チェスター嬢はエイブラム神父という友と伴侶を得て幸運だった。 彼はレイクランド付近の山の道と頂と坂を知っていた。 彼から彼女は啓発され、神秘的な松林の小道の名、ごつごつした険しい坂の気楽さ、 水晶の様な灰汁の朝、神秘的な悲しみで彩られた夢の様な黄金の午後、それらの真剣な喜びを知った。 だから、彼女は健康的になり、彼女の気が和らいだ。 彼女はエイブラム神父の有名な笑いに似て、友好的に幸せそうに、そして、女性的に笑った。 彼らは生来の楽天家だった。そして、穏やかで元気な顔を世界に見せる方法を知っていた。
ある日、チェスター嬢は客の一人からエイブラム神父の失った子供の話を聞いた。 急いで去り、鉱泉のそばでお気に入りの錆びたベンチに座っている粉挽き屋を見付けた。 小さな友が彼女の手で彼の手を握り目に涙を湛えていたから、彼は驚いた。
「ああ、エイブラム神父。」と彼女が言った。 「御免なさい。今日まで貴方の小さな娘について知らなかったの。 いつか彼女を見つけますわ。ああ、そう祈ってますわ。」
粉挽き屋は強い整った笑顔で彼女を見下ろした。
「ありがとう。ローズお嬢さん。」彼はいつもの明るい調子で言った。 「しかし、アグレイアを見つける望みは潰えました。 数年間、彼女が乞食にさらわれ、まだ生きていると思っていました。 しかし、私はその望みを捨てました。彼女が溺れたと信じています。」
「分かります。」チェスター嬢が言った。 「どんなに疑念が扱いづらいか。そして、まだ貴方は人の悩みを軽くできる程明るく整っている。 良きエイブラム神父様!」
「良きローズ嬢!」粉挽き屋が笑いながら真似た。 「誰が他人を自分よりも深く考えるでしょう?」
奇妙な雰囲気がチェスター嬢を打ったようだ。
「ああ、エイブラム神父。」彼女が叫んだ。 「もし私が貴方の娘と証明できれば、素敵ですね? そして、私を貴方の娘のように扱って呉れませんか?」
「もちろん、そうするよ。」幸せそうに粉挽き屋が言った。 「もし、アグレイアが生きていれば、貴方の様な小さな女性に育ってくれれば良いと願っています。」 彼は彼女と共に幸せな調子で更に続けた。 「粉挽き所で一緒に暮らしていた事を覚えていますか?」
チェスター嬢はすぐに深く考えた。彼女の大きな目は微かに閉じられ遠い何かを見ている様だった。 エイブラム神父は彼女がすぐ真剣になるから楽しかった。 彼女はそれ故、口を開くまで長い間座った。
「いいえ。」彼女は終に長いため息をついて言った。 「私は粉挽き所について全く覚えていません。 私は私の人生で今まで小麦挽き所を見たのは、貴方の楽しい小さな教会が初めてです。 そして、もし私が貴方の小さな女の子なら、それを覚えているでしょう? ごめんなさい。エイブラム神父。」
「私もそうだ。」エイブラム神父が彼女を慰めるように言った。 「しかし、もし貴方が私の小さな女の子であると思い出せないなら、ローズ嬢、 確かに貴方は他の誰かの子供であると思い出せる。 もちろん、貴方は両親を覚えていますね?」
「はい。私は彼らをとても良く覚えています。特に私の父を。 彼は貴方とは全く違います。エイブラム神父。 ああ、私はただ信じたかった。 さあ、行きましょう。貴方は十分休んだ。 今夕、虹鱒が泳ぐ池を見せると約束しましたね。 虹鱒を見た事がないの。」
夕方、エイブラム神父は古い粉挽き所から一人出た。 彼は大抵そこに座って、彼が道に面した田舎屋で住んでいた過去を考えた。 時間は緩やかに鋭い悲しみを消した。もはや過去の思い出を苦痛と共に思い出すことはなかった。 しかし、エイブラム神父が物憂げな9月の午後に、ダムスが毎日黄色の巻き毛と共に走っていた場所に座れば、レイクランドがいつも彼の顔に見る笑顔は無かった。
粉挽き屋はゆっくり曲がった険しい道を登った。 木々が道の端まで生い茂り、彼は帽子を手に木陰を歩いた。 リスが楽しそうに彼の右で古い線路の柵の上を走った。 うずらが小麦の切り株で雛たちを呼んでいた。 低い太陽が西に開いた渓谷にたくさん薄い黄金色を送った。 9月の初め。あと数日でアグレイアが消えた記念日となる。
半分山蔓で覆われた古い上射式の水車は木々を通り抜けた暖かい陽光を一部受けた。 道に面した田舎屋はまだ立っていた。しかし、間違いなく今冬の山風の前に崩れるだろう。 それは朝の薄暗さと野生の瓢箪の蔓に覆われて、ドアは一つ蝶番で留まっていた。
エイブラム神父が粉挽き所の扉を押し開け、穏やかに入った。 そして、暫く立ち止まった。彼は誰かが深い悲しみから泣いている音を聞いた。 彼は暗い木のベンチに座って、手に開いた手紙を持ち、頭を垂れているチェスター嬢を見た。
エイブラム神父は彼女の元へ行き、彼の強い手をしっかりと彼女に置いた。 彼女は見上げ、やっと彼の名を言って、更に話そうとした。
「まだ、ローズ嬢。」粉挽き屋が親切に言った。 「まだ、話そうとしないで。 悲しい気持ちにあるとき、少し泣くより効き目のあるものはない。」
鋭い悲しみを経験した年老いた粉挽き屋が魔法使いのように人から悲しみを除いた。 チェスター嬢の啜り泣きが落ち着いた。 今彼女は小さな端に飾りのないハンカチを持ち、 彼女の目からエイブラム神父の大きな手に落ちた涙を1滴か2滴拭った。 そして、彼女は涙ぐんだ目で見上げ、笑った。 チェスター嬢はいつも涙が乾かぬうちに笑える。 ちょうどエイブラム神父が鋭い悲しみでも笑えるように。 そのように、二人はとても似ている。
粉挽き屋は何も質問しなかった。 しかし、少しずつチェスター嬢が彼に話した。
それは若い者にとって大きく重大で、年寄りにとって笑いを回想する古い話だった。 予期される主題は愛だった。 とても良い正直な若い男がアトランタにいた。 彼はチェスター嬢の中にアトランタの他の人にない性質、あるいは、グリーンランドからパタゴニアを 探しても見つからない性質を見出した。 彼女はエイブラム神父に彼女が泣いていた手紙を見せた。 それは優しい、主に最上級の、緊急の手紙で、良い正直な若者が書くラブレターの作法に続いた。 彼はチェスター嬢にすぐ結婚するよう申し込んだ。 人生と彼は述べた。なぜなら、彼は彼女の3週間滞在の旅立ちに耐えられないと。 彼はすぐに返事が欲しいと懇願した。 そして、もし、それが良いものならば、狭軌鉄道を無視しレイクランドへ飛んで行くと約束した。
「そして今、どこに問題がありますか?」手紙を読んだ粉挽き屋が質問した。
「彼と結婚できません。」チェスター嬢が言った。
「彼と結婚したいですか?」エイブラム神父が尋ねた。
「ああ、私は彼を愛しています。」彼女が答えた。「しかし」 頭を垂れて再びすすり泣いた。
「おいで、ローズ嬢。」粉挽き屋が言った。 「貴方は私を信じられる。私は貴方に質問しないが、貴方が私を信頼できると思っています。」
「信じております。」女の子は言った。 「なぜ私がラルフを拒絶すべきか教えます。私は誰でもない。私は名前さえ持たない。 自分の名前は嘘です。ラルフは高貴な人です。私は全霊で彼を愛していますが、私は彼と結婚できません。」
「なんだ、こんなことですか?」エイブラム神父が言った。 「貴方は両親を覚えていると言った。なぜ名前が無いとおっしゃる?分かりません。」
「私は彼らを覚えています。」チェスター嬢が言った。 「十分覚えています。私の初めの回想は私たちの人生で遠い南の方でした。 私たちは何度も違う町と州へ移りました。私は綿を摘みました。そして、工場で働きました。 大抵、十分な食べ物と服がなく育ちました。 私の母は時々、私に良くしてくれました。 私の父は常に残酷で私を打ちました。 彼らは怠け者で不和でした。」
「ある夜、私たちがアトランタ付近で川のある小さな町で住んでいたとき、彼らが大きく口げんかしました。 そのとき、彼らが互いに虐待し怒らせる事を知りました。 ああ、エイブラム神父。私は存在する権利さえないことを知りました。理解できますか? 私は名前さえ持てなかった。私は誰でもないのです。」
「私はその晩逃げました。私はアトランタまで歩いて、仕事を見つけました。 私は自身にローズ・チェスターという名前を付けました。以降、自分の力で稼いできました。 今あなたは私がなぜラルフと結婚できないか、お分かりですね? ああ、私は彼に理由さえ告げられない。」
どんな同調より、哀れみより、彼女の問題にエイブラム神父が貶したことは良かった。
「なぜ、どうか、どうか。それだけですか?」彼が言った。「ふん。私は違う話と思いました。 もし、この若い男が完璧なら貴方の家系図が途切れていることを気にしない。 親愛なるローズ嬢、私の言葉を聞いて下さい。彼が気に掛けている人は貴方です。 気軽に彼に教えなさい、私に教えたように。 そして、彼があなたの話を笑って、それが為にもっと貴方を思うようになると受けあいます。」
「私は決して彼に教えないでしょう。」チェスター嬢が悲しげに言った。 「そして、私は彼や彼以外の誰とも結婚しないでしょう。私に権利がない。」
しかし、彼らは輝きを増した道を漂う長い影を見た。 そして、片方は短かった。 そして、今、奇妙な影が二つ教会に近づいた。 長い影は練習に訪れたオルガン弾きのフィービー・サマーズ嬢だった。 12歳のトミー・ティーグが短い影に対応した。 トミーがフィービー嬢の為にオルガンのポンプを踏む日だった。 そして、彼の裸足のつま先は誇らしげに道の埃を拒絶していた。(訳注:ぴょんぴょんと跳ねた)
ライラックをあしらった更紗ドレスのフィービー嬢は、両方の耳を覆う整った小さな巻き毛で、 礼儀正しくエイブラム神父に礼をし、彼女の巻き毛を儀礼的にチェスター嬢に揺らした。 そして、彼女と助手は険しい階段を上り、オルガン台へ行った。
影が集まっていて、エイブラム神父とチェスター嬢が佇んでいた。 彼らは黙っていた。そして、多分、彼らの思い出を思い出すのに忙しかった。 チェスター嬢は座っていて、頭を彼女の手に乗せていて、目は遠くに固定していた。 エイブラム神父は木のベンチの隣で立って、思慮深げに扉の外、道、そして廃れた田舎屋を見ていた。
突然、彼の光景が数十年前の過去に変換された。 トミーがポンプを踏み、フィービー嬢がオルガンの低音キーを叩き、 溜まった空気の量を量る為に鳴らし続けた。 エイブラム神父が考えるに、教会は消えた。 深い徐々に大きくなる振動が小さな骨組みに衝撃を与え、建物にオルガンの音はしなかったが、 粉挽き機の音がした。確かに彼は古い上射式の水車が回っていると思った。 つまり、彼はもう一度、埃の舞う古い山の粉挽き所で幸せな粉挽き屋に戻った。 そして、今や午後が訪れた。 そして、すぐに、彩りのある服を着て、道をヨチヨチ渡って、アグレイアが来て、 彼を食事に家へ連れて行くはずだった。 エイブラム神父の目は田舎屋の壊れた扉に固定した。
そして、奇跡がもう一つ起こった。 聴衆席の上で、長い梁に小麦粉の袋が蓄えられた。 恐らく、鼠がそれらを一つかじったのだろう。 とにかく、深いオルガンの音が一杯、聴衆席の床を破って、隙間から小麦の雨を降らせ、 エイブラム神父を頭から足まで白い塵で覆った。 そして、年老いた粉挽き屋が教壇まで歩き、腕を振りながら粉挽き屋の歌を歌い始めた。
「水車が回る。
麦粉が落ちる。
粉に塗れて、粉挽き屋は幸せだ。」
そして、残りの奇跡が起こった。 チェスター嬢が木のベンチから前へ歩み、小麦粉のように青い顔で、目を広く開け、 夢の中を歩いているようなエイブラム神父を見つめた。 彼が歌い始めたとき、彼女は彼に腕を伸ばした。 彼女の唇が動いた。 彼女は彼を夢のような調子でこう呼んだ。「父ちゃん。ダムスをお家に連れてって!」
フィービー嬢がオルガンの低いキーを放した。 しかし、彼女の仕事は十分だった。 彼女が打った音は閉ざされた記憶の扉を壊した。 そして、エイブラム神父は彼の失ったアグレイアを腕できつく抱いた。
レイクランドを訪れれば、彼らがこの話を詳しく教えるだろう。 彼らは話の筋が後にどのように辿ったか、そして、 明らかになった粉挽き屋の娘の歴史(子供らしく愛らしい故、 ジプシーが9月のあの日、彼女をさらった)を教えるだろう。 しかし、貴方は影になった鷲の家の玄関に心地よく座るまで待つべき。 そして、落ち着いて話の続きを聞ける。 フィービー嬢の深い低音の音がまだ柔らかに繰り返している内に、 我々の話をここで終わらせるのが一番であろう。
そして、私の心に、長い黄昏にエイブラム神父と彼の娘が鷲の家へ歩きながら起こったことの 最も良い部分も喜んで話そう。
「お父さん。」彼女が幾分弱気に疑って言った。「たくさんお金をお持ちですね?」
「たくさん?」粉挽き屋が言った。「うむ。場合による。月や月に同じぐらい高い物を買うのでなければ、たくさんだろう。」
「それはとてもとても高いですね。」いつも注意深く10セントを数えるアグレイアが尋ねた。
「電報をアトランタへ打つのは。」
「ああ。」エイブラム神父が小さな溜め息をついて言った。 「分かった。ラルフに来るよう頼みたいのじゃな?」
アグレイアは彼を微笑しながら見上げた。
「私は彼に待つよう頼みたいの。」彼女が言った。「私はやっと父を見つけたから、暫く二人でいたいの。私は彼に待ってと言いたいの。」
終わり。
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